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事業に対する特許の貢献度評価

事業に対する特許の貢献度評価

(1)事業化の趣旨

複数の特許技術によって支えられている事業では、事業の実施に必要な特許群を特定したうえで、当該特許群を形成する各特許の貢献度を把握する必要を生じる場合があります。

日本知的財産仲裁センター(以下、「当センター」という)は、「事業に対する特許の貢献度評価の実用化研究について」(以下、「貢献度評価報告書」という)で、次の①~⑧に掲げる場面などにおいて「事業に対する特許の貢献度評価」を活用し得るとの研究成果をまとめました(平成27年3月)。

① 技術研究組合が研究開発の成果をもとに株式会社化するときの貢献度割合の評価
② 複数会社(ベンチャー、中小企業、大企業)で行う共同研究開発の成果を
  ジョイントベンチャー等で事業化するときの貢献度割合の評価
③ 特許保有の複数企業が集合して別会社するときの貢献割合の評価
④ 産学連携における不実施補償の対価算定
⑤ 職務発明又は報奨の配分を事業に対する貢献割合で評価
⑥ 産官学連携で行う大型研究開発プロジェクトの産学の貢献割合の評価
⑦ パテントプールのロイヤリテイの配分の算定
⑧ 企業における戦略的権利形成の達成度の評価

特に、①「技術研究組合の共同事業化」については、2009年改正技術研究組合法との関係から、第三者機関たる当センターによる「事業に対する特許の貢献度評価」の事業化に期待が寄せられました(経済産業省・平成25年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「事業の中での知的財産権の貢献度割合に関する調査研究報告書」平成26年2月)(以下「調査研究報告書」という)。

そこで、当センターは、上記①だけでなく②~⑧の活用場面をも視野に入れ、種々の活用場面へと適用できる信頼性の高い事業とするべく、弁護士と弁理士を評価人とする「事業に対する特許の貢献度評価」を事業化することとしたものです。便宜上、このような評価を「貢献度評価」と略称します。

(2)貢献度評価の主な特徴

ア 弁護士と弁理士とによって評価を行います。
事業に対する特許の貢献度を、法的側面からも専門的な見解を提供するためです。
第三者的立場で評価を行う評価人となる弁護士及び弁理士として、当センターに予め登録された評価人候補者の中から、公正性・独立性・中立性を有する者を、所定の選任手続に従って選任いたします。

イ 事業自体を評価するものではありません。
事業の成立は前提としますが、事業の成否や事業の盛衰を予測したり評価したりするものではありません。

ウ 事業に対する特許群全体の貢献度を「1」として評価します。
事業に対する特許群全体の貢献度を「1」として、個々の特許を評価します。特許群全体が事業に対してどれほどの貢献度を有するかは、評価対象ではありません。事業に対する特許群全体の貢献度は、事業の性格等に応じて評価すべきものであり、経営的判断が必要になることから、法的評価を主目的とする貢献度評価には馴染まず、事業遂行者側において判断すべきであるからです。この点についての第三者の判断を求める必要がある場合は、別途、当センターにおける調停等において評価を得ることも可能と考えます。

エ 特許群全体の中での個々の特許の貢献度を評価するものです。
個々の特許の貢献度を評価することにより、特許権者単位の得点、発明者単位の得点として、貢献度評価を行うことも可能となり、活用の場面に応じて評価結果を利用することができるからです。

オ 実施技術に関する特許のみを対象とするものではありません。
調査研究報告書、貢献度評価報告書にも指摘される様に、事業を支える特許としては、(ア)「実施技術に関する特許(守りの特許)」だけでなく、
(イ)「代替技術での事業参入を阻止する特許(守りの特許)」、
(ウ)「事業の弱みを解消する特許(攻めの特許)」
   をも検討する必要があります。申請人が希望する場合は
(エ)実施技術と等価的価値を有する特許(守りの特許)、
(オ)実施技術と補完的価値を有する特許(守りの特許)も評価の対象に含めます。
※(ウ)の「事業の弱み」の把握には当センターの「事業適合性判定」を活用できます。

カ バックグラウンド特許も対象とします。
評価対象事業を実施する事業主体と協力関係にある関係者が管理する特許であって、評価対象事業において現に実施し、又は実施を予定している技術(以下、「実施技術」という)の実施に当たって実施許諾が必要であり、かつ、当該事業の事業主体が関係者から実施許諾を受けることができると認められる特許をバックグラウンド特許といいます(規則2条1項10号)。
複数主体が行う共同事業にあっては、バックグラウンド特許を利用しなければ事業が実施できない場合があります。このため、共同事業体として保有する共同研究開発成果に基づく特許以外にも、共同事業において「必須となるバックグラウンド特許」は、これを評価対象に含ませることとしています。
なお、事業の弱みを解消する「攻めの特許」に該当するバックグラウンド特許もこの「必須となるバックグランド特許」に該当し評価の対象に含ませることとしています(規則第3条2項)。

キ 出願中の特許、対応外国特許も対象とします。
貢献度評価報告書において報告される通り、研究の前提とした調査研究報告書の評価手法と同様、出願中の特許を排除する理由がないからです。但し、評価においては登録済みの特許と未登録の特許とで差を設けます。
また、貢献度評価報告書において報告される通り、対応外国特許も事業の競争力を高める価値をもつことから、事業を実施する国・地域への「対応外国特許の有無」を、個々の特許の貢献度に加えるという観点で評価の対象としました。

(3)貢献度評価の概要

貢献度評価は、事業に対する特許の貢献度評価手続規則(以下「規則」という)に従って、
① 事業者等(中小~大企業の製造事業者、金融機関、LLP、技術研究組合、
  産学連携組織等)に対し、
② 複数の特許(注1)によって支えられている事業の事業競争力を高める視点で、
  特許を定性的に評価し、  複数の特許間の相対的価値を「貢献度評価の基準」
  (規則10条)に従って評価するため、
③ 当センターの貢献度評価候補者名簿に予め登録された多くの評価人候補者の中から
  公正性・独立性・中立性を満たす弁護士1名・弁理士1名が、協働して、
④ 特許群全体としての貢献度を「1」としたときの個々の特許の貢献度を評価するサービス
  を提供します。

貢献度評価の結論は、評価書を申請人(本評価の依頼をする人)に送付することにより告知します(規則11条)。
貢献度評価は、当センターが選任した専門家である評価人の意見であって、何人に対しても拘束力を有するものではありません(規則12条)。
なお、貢献度評価に対する不服の申請(裁判を含む)はできません(規則13条)。

また、申請に先だって「事前相談」(注2)をすることができます。

注1:日本又は外国において、取得された特許又は登録実用新案並びに係属中の特許出願又は
   実用新案登録出願をいいます(規則1条2項、附則)。
注2:評価人候補者の中から選任された弁護士/弁理士による、貢献度評価の概要、評価の種類、
   費用及び条件の説明、申込者の希望に応じた評価の種類(第1号、第2号、第3号)の特定、
   申請書類の記載要領についての助言、申請の意思確認を行う相談制度をいいます
   (規則4条)。

(4)貢献度評価の種類(規則3条)

ア 第1号貢献度評価
評価対象事業における実施技術特許(申請人が希望する場合は等価的技術特許及び補完的技術特許を含む。以下同じ。)を評価対象とする貢献度評価であって、以下のいずれかを選択することができます。
[簡易評価] 技術要素及び当該技術要素中の各技術に対する特許の振り分けを申請人が実施
[詳細評価] 技術要素及び当該技術要素中の各技術に対する特許の振り分けを評価人が実施

イ 第2号貢献度評価
第1号貢献度評価に加え、代替技術特許を評価対象とする貢献度評価であって、以下のいずれかを選択することができます。
[簡易評価] 技術要素及び当該技術要素中の各技術に対する特許の振り分けを申請人が実施
[詳細評価] 技術要素及び当該技術要素中の各に技術に対する特許の振り分けを評価人が実施

ウ 第3号貢献度評価
第1号貢献度評価又は第2号貢献度評価価に加え、評価対象事業における攻めの特許を評価対象とする貢献度評価であって、以下のいずれかを選択することができます。
[簡易評価] 技術要素及び当該技術要素中の各技術に対する特許の振り分けを申請人が実施
[詳細評価] 技術要素及び当該技術要素中の各技術に対する特許の振り分けを評価人が実施

※攻めの特許の条件:
① コア技術及び準コア技術に属していないこと
② 実施技術(コア技術或いは準コア技術)の実施を阻害する第三者特許(弱みの特許)が
  存在する場合に、当該第三者の実施技術の実施を阻害することによって弱みの特許を
  排除し得る特許であること

(5)貢献度評価に必要となる資料及び確認事項

ア 申請人に提出していただく資料(規則5条)
資料1:対象事業における実施品・実施方法、並びに、それらの 技術要素及び重要な技術等に
    関する説明資料
資料2:評価対象とする特許のリスト
資料3:第三者特許による弱みを認識している場合は、 当該第三者特許のリスト
    (攻めの特許を評価対象に含める場合に必要となる。)

イ 面談で特定・確認する事項(規則9条)
① 評価対象事業、評価対象製品等
② 評価対象事業を構成する技術要素
③ 技術要素毎の評価対象事業に対する相対的な重要度
④ 技術要素毎の特許(群)とノウハウ等との間の貢献割合
⑤ 各技術要素に含まれる技術の事業競争力に対する相対的な重要度
⑥ 以下の事項を特定するための情報
  ⅰ)コア技術、準コア技術及びノンコア技術
  ⅱ)実施技術、等価的技術、補完的技術及び代替技術
  ⅲ)弱みの特許及び攻めの特許
  ※「弱みの特許」の把握には当センターの「事業適合性判定」を活用できます。
⑦ 評価対象事業、評価対象製品等を実施する国などの個別事情
⑧ 攻めの特許を含む評価においては、弱みの特許並びに第三者の事業の弱みと認識している情報
⑨ 評価対象とする特許リストの内容

※ 評価の手順等については「評価手順概要」「評価仮想事例」「法的評価係数の事例」等を参照して下さい。

(6)事前相談及び貢献度評価の処理フロー

ア 「事前相談」の処理フロー

「事前相談」の処理フロー

イ 「貢献度評価」の処理フロー

「貢献度評価」の処理フロー

(7)貢献度評価にかかわる者

ア 代理人(規則5条3項)
貢献度評価の申請を含む貢献度評価の手続は、当事者本人又はその代理人を通じて行うことができます。代理人は、弁護士又は弁理士がなることができます。弁護士又は弁理士でない者が代理人になろうとするときは、当センターの承認を得ることが必要になります。

イ 評価人(規則6条、7条、8条)
当センターが、当センターの貢献度評価人候補者名簿から弁護士及び弁理士各1名を評価人として選任します。評価人候補者の一覧をご覧願います。
評価人が評価事件の当事者との間で利害関係を有しないことを確認するために、評価人は、当センター及び申請人に対して、「公正性・独立性・中立性に関する言明書」(様式2)を提出するなどの情報開示義務を負います。
また申請人は、申請書と共に、事件に関し利害関係を有する第三者と判断する者を、特定利害関係者指定書により指定することができます。
評価事件の当事者は、評価人に公正性、独立性又は中立性を疑うに足る相当の理由があるときには、当該評価人の忌避を申請することができ、当センターは、その申請に理由があるときには、忌避を認めて、新たな評価人を選任します。

ウ 事件管理者(規則17条)
事件の管理は、選任された「事件管理者」が行います(規則17条3項)。事件管理者は担当する判定の事件を円滑に進捗させるために、申請書類その他の担当事件に関係する書類の確認、申請人・評価人間の連絡・調整、申請人及び評価人との合意事項の確認、評価書の送付等を行います(規則17条7項)。
また、事件管理者が評価当事者との間で利害関係を有しないことを確認するために、事件管理者は、当センター及び申請人に対して、「公正性・独立性・中立性に関する言明書」(様式3)を提出するなどの情報開示義務を負うものとされています(規則17条5項)。
なお、事件管理者は、「面談」に同席して意見(判定の内容に関わる事項を除く)を述べることができます。

(8)貢献度評価を申請するには

評価申請には下記の添付書類が必要です(規則5条2項)。
① 申請人が法人であるときは、代表者印を押印した書面、又は代表者の資格を証する書面
② 代理人を定めたときは、代理権を証する書面
③ 申請対象事業説明書(正本1通、写し2通)
④ 申請対象事業に関する技術要素説明書(正本1通、写し2通)
⑤ 貢献度評価の対象となる特許リスト(正本1通、写し2通)
⑥ 申請人による宣誓及び同意書(様式1)
①の書類は、当該法人の所在地を管轄する法務局で入手できますので発行日から3ヶ月以内のものをご用意下さい。
記載例、各書式につきましては、評価手続の書式及び雛形をご参照下さい。ご不明な点がございましたら、事務局までご相談下さい。

(9)貢献度評価にかかる費用(規則16条)

※ 料金は全て税抜価格となっています。

ア 事前相談料 1万円

イ 貢献度評価の費用
① 第1号貢献度評価
  [簡易評価]
   10万円/申請+2.5万円/特許
  [詳細評価]
   10万円/申請+10万円/技術要素+3万円/特許
② 第2号貢献度評価
  [簡易評価]
   20万円/申請+2.5万円/特許
  [詳細評価]
   20万円/申請+10万円/技術要素+3万円/特許
③ 第3号貢献度評価
  [簡易評価]
   第1号貢献度評価又は第2号貢献度評価の一申請料当たりの手数料に10万円を追加する。
  [詳細評価]
   第1号貢献度評価又は第2号貢献度評価の一申請料当たりの手数料に10万円を追加し、
   さらに攻めの特許一つ当たり10万円を追加する(10万円/攻めの特許)。
④ 送金納付先
  日本知的財産仲裁センター三井住友銀行霞が関支店普通口座6559091

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