<当センターの調停業務について>
当センターは様々な業務を行っていますが、そのうちの一つに調停があります。
調停とは、簡単に言えば、公平な第三者が間に入って、話し合いにより解決する制度です。
当センターでは、弁護士、弁理士や学識経験者等の知的財産に関する専門家を調停人として選任できる体制を整えています。
調停は話し合いによる解決を目指すので、調停によって和解が成立しなかったときには、調停人は手続を終了させることになります。訴訟のように判決が出されることはありません。逆に調停がまとまったときは、当事者はお互い納得しているので、自発的に調停で定めた事柄が守られることが通例です。この点は判決の場合と違うところです。
<法改正前のADR機関における調停の不都合>
もっとも、調停で金銭を払うことを約束しながら、金銭を払わない当事者もいます。
そのような場合には、差押などを行いたいですよね。
今までは裁判所が行う民事調停で和解が成立したときは調停調書に基づく強制執行ができましたが、当センターのようなADR(裁判外紛争解決手続)機関で調停が成立したときは強制執行ができず、仲裁手続に移行して仲裁判断を求めるか、公証人の下で強制執行認諾文言付きの公正証書を作成してもらうか、または改めて裁判所に訴訟を提起して、確定判決もしくは仮執行宣言付きの判決等を得る必要がありました。
<ADR法改正>
そこで令和5年にADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)が改正され、裁判所が特定和解に基づく強制執行(民事執行)を許す決定(執行決定)の制度が新たにできました(同法27条の2)。この制度は令和6年4月1日に施行されています。
ここで特定和解とは、「認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたもの」をいいます(ADR法2条5号)。
当センターはADR法に基づく認証紛争解決事業者ですので(調停手続規則も改正済みです。)、当センターでの調停は認証紛争解決手続にあたります。当センターの調停でまとまった話し合い(和解)に「民事執行をすることができる旨の合意」を含めれば、万一の場合でも強制執行を行うことができます。なお事業者と消費者との間の契約紛争など一定の類型は除かれていますが(ADR法27条の3)、このうち、外国企業などとの「国際和解合意」については、「調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律」という別の法律に基づいて、強制執行を行うことができます)。
強制執行をするには、裁判所に対し特定和解に基づく執行決定の申立を行います。裁判所での審尋を経て無効・取消しなどの却下事由がない限り執行決定がされます(ADR法27条の2第10項から第12項まで)。
<当センターのご利用>
調停は訴訟と違って柔軟な解決を検討することができますし、公開されないまま手続を進めることができます。話し合いによる紛争解決の余地があるなら、是非当センターへの調停申立も考えてみてください!また当センターの調停を申し立てられたときには、話し合いによりお互い納得できる解決を図りませんか。
(杉山一郎)