仲裁とはどのような制度か
- 仲裁とはどのような制度ですか。また仲裁手続ではどのようなことが行なわれるのですか?
- 仲裁は、当事者が紛争についての判断を、中立的第三者である仲裁人の判断に委ね、それに従うことを予め合意することを前提として行なわれる紛争解決制度です。
仲裁は、弁護士及び弁理士が少なくとも1名ずつ参加して構成される3人の仲裁人の合議体により行なわれます。
仲裁人は、仲裁期日を指定して、センターが指定した場所で期日を開催します。また仲裁人は必要に応じて準備期日を開催して、主張の整理、補充、証拠書類の提出等の必要な準備を行ないます。
仲裁手続は、仲裁人が仲裁判断を行なうことにより終了します。仲裁判断に対しては、特別の場合を除き、不服を申立てることができず、裁判で争うことはできません。
仲裁判断は、確定判決と同じ効力を有し、裁判所の執行決定を得ることにより、仲裁判断に基づいて強制執行することができます。
仲裁を申し立てることができる事件の種類
- 仲裁を申立てたいのですが、申立のできる事件には、制限がありますか?
- 産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)、著作権、不正競争防止法、ドメイン名の他、営業秘密、ノウハウ、種苗の育成権、半導体集積回路保護法の利用権など、知的財産権に関係する事件であれば、センターの仲裁を申立てることができます。
職務発明についての争い
- 職務発明についての争いを仲裁により解決することはできますか?
- 職務発明についての争いが生じた際に、従業者と使用者との間に仲裁合意ができるのであれば、可能です。
職務発明に係わる紛争を対象とする仲裁合意については、仲裁法附則第4条の「当分の間、この法律の施行後に生じた仲裁合意であって、個別労働関係紛争を対象とするものは、無効にする。」との規定により、事前合意が無効となるおそれがありますので、注意が必要です。仲裁法附則第4条の規定は、双務的(従業員・使用者の双方から無効の主張が可能)ですので、従業員及び使用者のどちらにも仲裁に応じることについて義務づけができません。従って、将来職務発明の対価についての争いが生じた場合に仲裁を利用したいというのであれば、 従業者と使用者との間で結ぶ契約の中に、仲裁合意を拒否権付きとした仲裁条項を設けておき、仲裁を申立てるに際して、改めて、仲裁合意書を作成する(つまり、契約の中で仲裁の可能性を明示的に示しておく)のがよいと思います。
仲裁鑑定
- 仲裁鑑定とはどのような鑑定ですか。また仲裁鑑定を利用して解決するのに適した紛争の事例としてはどのようなものがありますか。
- 通常の仲裁は、ある当事者が相手方に対して損害賠償、差止め、物の引渡しなどの請求権があるかどうか、当事者間に特定の権利関係があるがどうかを判断し、それによって、当事者間の紛争を最終的に解決しようとするものです。これに対して鑑定請求は、最終的解決の前提となる争点に限定して鑑定仲裁人の判断を求め、その判断を最終的解決の前提としようとするものです。
実際の利用方法としては、ライセンス契約交渉に際して、ライセンシーのある製品がライセンサーの複数の特許のうちの1つの技術的範囲に属するかどうかに限定して仲裁鑑定を求め、その判断を双方共通の前提として契約の対象範囲、条件を決定するということなどが考えられます。
仲裁手続の非公開
- 知的財産関係なので当事者間で秘密裏に解決したいのですが?
- 仲裁手続は、裁判とは異なり、非公開で行われます。仲裁の内容等は一切公表しない扱いになっております。
被申立人との非同席での手続進行の可否
- 仲裁申立はしたいのですが、相手方が同席している場で、当社の事情について話をしたくありません。仲裁人に別々に話を聞いてもらうことは可能ですか?
- 仲裁の場合、仲裁人は、仲裁期日において、当事者を個別に又は同席のうえ審尋することになっています。仲裁では、被申立人と同席しないまま手続を進めることが可能です。準備期日の場合は、一方の当事者だけの出席のもとに開催することができますから、個別に話を聞くこともできます。なお、被申立人に秘密にしておきたい事項があるときは、証拠資料を提出する前に、この証拠の特定部分を被申立人に秘密にすべき旨を仲裁人に申立てることができます。
申立受付の場所
仲裁人の選任方法
- 仲裁人の選任はどうするのですか?
- 仲裁人は、センターが仲裁人名簿から弁護士、弁理士を含む3人を選任します。各当事者が各1人選任しセンターが1人選任することも可能です。
仲裁人の変更
- 仲裁人を手続の進行中に変更してもらえますか?
- 当事者の合意に基づいた解任の申し出があれば、センターの運営委員会が仲裁人を解任します。また仲裁人に公正性または独立性を疑うに足る相当の理由がある場合、当事者は、センターに対してその仲裁人の忌避の申立を行なうことができます。
仲裁人の公平性
- 仲裁人の公平性はどのようにして確保されるのですか?
- 仲裁の申立人及び被申立人には、事件に関し利害関係を有すると思われる第三者を利害関係者として指定する特定利害関係者指定書を提出してもらいます。仲裁人は、就任の際に、特定利害関係者指定書の開示を受けて、当事者が指定した利害関係者との間に利害関係がないことを言明した言明書を提出します。
当事者は、仲裁人に公正性または独立性を疑うに足る相当の理由があるときに、仲裁人の忌避の申立を行うことができます。
仲裁人の専門分野
- 商標に詳しい弁理士あるいは弁護士に仲裁人になってもらいたいのですが、専門分野は教えてもらえますか?
- センターでは専門分野別の調停人・仲裁人・判定人候補者名簿を作成して公表しております。知的財産権の各分野に対応が可能です。
仲裁人
- 仲裁人はすべて弁護士と弁理士なのですか?
- 大学教授等の学識経験者も含まれています。なお仲裁人の専門分野及び経歴については、調停人・仲裁人・判定人候補者名簿を参照してください。
仲裁を行う場所
- 仲裁を行う場所はどこですか?
- 弁理士会館、弁護士会館、センターの名古屋支部、関西支部、各地の支所その他センターもしくは仲裁人が指定する場所になります。当事者双方の住所等によって、希望の場所があるときは、仲裁人に話して下さい。このほか、当事者双方の同意があれば、電話会議、TV会議も活用できます。
外国からの仲裁申立
- 外国からの仲裁申立の場合には日本語による訳文を必ずつけなければならないのでしょうか?
- 申立書・答弁書・準備書面などは、日本語を正文とするのが原則ですが、提出する外国語の証拠や資料については、仲裁人の意見によって日本語訳の提出を省略することもあります。
申立の代理人
- 当方は特許侵害の件で仲裁を申立てる予定です。代理人は弁護士に依頼する予定ですが、選任についてはセンターの意見を聞く必要がありますか?
- 代理人の選任については、センターに意見を聞く必要はまったくありません。貴社の顧問弁護士や弁理士の方でも結構です。
代理人費用
- 仲裁申立をしたいのですが、代理人の費用は?
- 報酬額は個々の代理人により異なります。具体的な費用については、事件を依頼される際に個々にご相談ください。多くの代理人は、報酬額を裁判よりも低額に設定しているようです。
仲裁判断
- 仲裁判断について詳しく教えてください。
- 双方当事者が仲裁合意をしたうえで、審理を尽くして、仲裁人が仲裁判断を行います。仲裁判断は、裁判所の確定判決と同じ効力を持ちます。したがって、仲裁判断がなされると、法律に定める取消事由がない限り、再度、裁判で争うことができなくなります。この点が仲裁の特徴です。終局的解決に時間を要しないという利点があります。後日、仲裁判断に基づく義務の履行がなされないときは、裁判所の執行決定を得たうえで、強制執行も可能となります。
仲裁申立の費用
- 仲裁の申立にはどれくらいの費用がかかりますか?
- 申立時に、申立手数料として10万円(+税)を納付していただきます。消費税は内税です。
ほかに、期日手数料として、当事者は、各10万円(+税)を各仲裁期日の手続終了後直ちに納入していただきます。
なお、審理終結後、直ちに、仲裁判断書作成手数料として、当事者は、各20万円(+税)を納付しなければなりません。
また、仲裁手続で和解が成立したときは、和解契約書作成、立会手数料として、当事者は各15万円(+税)を和解成立後直ちにお支払いただくことになります。